前述のように、保険は金銭面での損失をカバーするシステムである事から、それを逆手にとって不正に金銭を得ようとする事件が後を絶たない。そもそも保険契約者と保険会社の関係は、典型的なプリンシパル=エージェント関係とみなされており、逆選択やモラル・ハザードが発生する危険を常に背負っているといえる。保険における逆選択とは、リスクがより大きな者が、保険加入に際してより強い動機を持つため、結果として保険加入者がリスクのより大きな者で占められてしまう傾向をさし、モラル・ハザードとは、保険加入によって保障(補償)が得られるために、加入者がリスクを回避することを控えてしまうことをさす。 例えば生命保険の場合は、被保険者となる人物に過度の保険に加入させ、その人物を意図的に殺害・または重度の障害などを負わせる事によって、多額の保険金を得ようとしたり、損害保険の場合は対象となる物を意図的に損壊・または損壊したなどと偽って報告することにより保険金を貰い、新しい物を購入したり実際の収入に結びつけたりしようとする事がある。中には実際に掛かった費用(修理費用など)を過大申告し、その差額分のデータ復旧 を得ようとする事もある。 これらは保険金を騙し取る行為であり、「保険金詐欺」という立派な犯罪となる。このような犯罪行為を阻止するため、保険会社は、加入時あるいは支払時に契約内容あるいは請求内容を審査したり、保険会社間で契約情報や事故情報を交換したり、調査会社に委託してその保険事故が正当なものであるかどうかを調査することがある。 児童を対象とした生命保険では犯罪を誘引しないよう保険金の上限が低く抑えられている。また、成人を対象とした場合でも保険金がある一定額を超えると保険会社間で情報交換をして被保険者に複数の生命保険会社から多額の保険金がかけられていないか調査する仕組みとなっている。 上記は保険金を受け取る側の不正行為であるが、近年は保険金を支払う側、つまり保険会社による不正が話題になっている。 バブル経済の崩壊以降の低金利政策によって多額の逆ざやを抱えることとなった保険会社は、逆ざやをカバーするための収益の改善に躍起となった。この結果、保険会社にとってコストとなる保険金の支払いを渋る状況が生まれた。 代表的なものは2005年に発覚した明治安田生命保険によるものであり、明治安田生命保険はこれで2度にわたり業務停止命令を受けることとなったが、その後このような不正な理由で支払い拒否をしていた保険会社が続々と判明し、保険業界全体に不正が蔓延していたことが明らかになる。 なお、保険金の支払い拒否自体はあってしかるべきであることには注意が必要である。保険金詐欺のようなケースはもちろん、加入時に病気にかかっていることを保険会社に正しく報告しない(告知義務違反)ようなケースでも保険金が支払われないことがある。病気にかかっている、つまり死亡のリスクが高いことに見合う保険料の支払いを逃れようとする詐欺的行為と見なされるためである。 すなわち、前述のような保険会社による不正として取り上げられている保険金の支払い拒否は、正当な理由で拒否されたものではなく、不当な理由で支払いを拒否されたために問題になったものである。これについて詳しくは保険金不払い事件を参照されたい。 新潟県中越地震では家屋の倒壊のため補償の整体 学校 をしたが、建築学的には全壊の状態にもかかわらず保険金の支払いを避けるため、外見上半分残っているのは一律半壊の扱いをする保険会社もあったといわれる。これは、営業部門に比べ事故査定(損害調査)部門の人員を減らし、専門の子会社への業務委託を進めてきた構造的な問題から来ていると言われる。 また、大手損害保険会社をセミナー に自動車保険金の支払い漏れが相次いで明るみに出て、監督する金融庁による厳しい処分を受けた会社もあった。これは「損害が発生していても契約者からの請求がなければ支払わない」という姿勢にも起因するが、過度の商品開発競争により各種の特約が作られたものの、営業最優先の体質により、事故査定部門への案内不足やシステムチェック機能を開発の怠慢が発生したことも大きな要因と考えられている。 保険会社の新契約偏重・利益先行型姿勢の煽りを受け、一部の保険販売員や募集人・保険代理店が同じく新契約偏重・利益先行の姿勢をとるようになり、新契約締結のためならば違法行為をしても構わないと考える者が増えてきており、モラルの低下が進んでいる。これは、新契約の締結によって手厚い募集手数料や待遇(高額な商品の贈呈など)が受けられるというシステムがその一因になっており、契約者軽視かつ金を重視するようになっている業界の姿勢が問題となっている。 例えば生命保険においては、募集人や通販 へ支払われる募集手数料体系が顧客サービスの品質を大きく下げている。手数料の支払いにはL字払い(新規契約を締結するとまず大きな手数料が支払われ、その後数年間に渡り一定の手数料が支払われるというもの。初年度の手数料は、顧客が支払った初年度の保険料と同額以上、といった保険会社もある)という独特のシステムが定着しているが、これは言わば「新規契約を最重要視させる」システムであり、それゆえ既存顧客への対応が悪化する最大の要素となっているほか、中にはその大きな募集手数料を狙った悪質な代理店により、自身へ支払われる募集手数料が切れるタイミングを見計らって既存契約者へ新たな契約を提案したり、また過大なモバイル アフィリエイト の契約や必要の無い契約を推し進めるなどして新契約を締結させてしまい、最終的に顧客に損害を与えてしまう事も実際にある。 このような募集手数料体系は、募集人や代理店のモラル低下を招き、保険業法に違反する行為に走らせてしまう原因となっているため、無視できない状況下にある。また銀行代理店など大手代理店に対して、各保険会社が競って手数料をつりあげており、契約者軽視となりやすい状況がある。 2006年8月頃から明らかになった問題として、消費者団体信用生命保険がある。 大手消費者携帯 アフィリエイト が、会社を受取人として債務者に対し生命保険を掛けていた問題である。債務者に断り無く生命保険を掛けていたケースもある。これは債務者死亡(自殺・生死不明での夜逃げ等も含む)による貸し倒れリスクとそれによる審査の厳格化の回避、債務を相続した遺族の負担の軽減、債務者死亡後の返済に関わる迷惑を遺族にかけない、などの名目があるものの、2005年度でこの消費者団体信用生命保険で保険金を受け取ったケースは4万件弱あり、さらに死亡原因の半数の2万件が不明、その1割が自殺であったことが判明した。またこの保険金を消費者金融企業各社が合計300億円受領していたこと、そして一部には弁済金以上の保険金を獲得した例もあると判明した。 一方で、保険会社側も大手消費者金融各社からの多額の保険料収入を考慮し、契約より2年以上経過しての保険金支払いに際しては死因等を充分に調査せず、安易に死亡保険金支払いに応じていたことも判明している。